『無意識の発見』エレンベルガー,H.F.

膨大な研究史、著作をもとにして力動精神医学および無意識を扱う心理学の源泉、ルーツを辿る大著。

精神医学史として読むことのできる本書であるが、内容はその成立以前へと大きく遡る。古くはシャーマンや悪魔祓い、呪術にはじまり、メスメル,F.A.の「動物磁気療法」からシャルコー,J.M.の催眠、ジャネ,P.や精神分析の創立者フロイト,S.に至るまで、研究者らの学説をその生活史とともに記述している。

なかでもフロイトやその袂を分かったユング,C.G.、アドラー,A.については生涯を丁寧に記載し、同時代を生きた著者がその理解につとに努めようとする姿勢が感じとれる。

また、本書のなかで「創造的な病」というクリエイティブな働きを成し遂げた天才達が陥った病的状態について言及がなされている点は見落としてはならないだろう。

精神医学ないし心理学といったかたちで‟人の心をみる”といった行動が科学的視点を確立するためのプロセスについて深いまなざしを与えてくれる。

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