ジークムント・フロイト(1856-1939)

オーストリアの精神科医であり、精神分析学の創始者として、その礎を築きました。
神経症研究、無意識研究を行うなかで心理性的発達理論、リビドー論、幼児性欲をはじめとした今日の精神分析に至るまでの重要概念を発見した人物です。

精神分析学の創始ー『ヒステリー研究』ー
1885年、29歳のフロイト,S.はヒステリーの研究者であったシャルコー,J.M.のもと、パリにて催眠を用いるヒステリー治療を学びました。
翌1886年、帰国したフロイトはシャルコーから学んだ治療法を開業医として実践に移します。
1895年、39歳になったフロイトは試行錯誤を繰り返しつつも治療観を発展させていきます。交流のあったブロイラー,J.と『ヒステリー研究』を共同で発表。患者の回想のほとんどが幼児期の性的体験に辿りつくことから、抑圧された願望や激しい感情に対する自由連想法の実施・・・といった精神分析の基礎的な理論が固められていきました。

「無意識に封印した内容を身体症状としてでなく、回想によって言葉で表出できれば症状は消失する」・・・この治療法は「お話し療法」と呼ばれるようになっていきました。

欲動論
フロイトの理論はリビドー(性エネルギー)を幼児性欲といった概念によって子どもにも想定しています。

『夢判断』1900年

親との関わりや発達のなかでそれらが適切に扱われ、活動へうまく向けられていくことに焦点を当てています。
こういった性欲もしくは自己保存への欲動を含めて人間をとらえていく見方は「欲動論」とも呼ばれています。

○心理性的発達理論…幼児期〜青年期までのリビドー発達を明らかにし、どのように性格が形成されていくのかを分析しています。各段階で敏感になる身体部位に基づき、5つの発達段階があるとされます。

フロイトはそのなかで心的装置として、欲望を充足しようとする「エス」、欲望を抑圧しようとする「超自我」、両者を調停する「自我」のせめぎ合いを仮定し、モデルとして提示しました。

自由連想法          寝椅子に寝た状態で自分について自由に語る治療法。フロイトは幼い頃の外傷体験(特に性的なもの)に注目しており、それらが意識化され、浄化(カタルシス)されていくことを重要視する。
防衛機制 受け入れがたい状況、心理的な危機に晒されたとき、不安を軽減しようとする無意識的な心理メカニズム。本来の欲求やそれを脅かすものに対し、防衛機制がどのように働いていたかを分析する。(それらはのちにフロイト,A.によって整理・洗練されることとなる)
転移 過去に重要な他者(両親など)との間で生じた欲求や感情、葛藤や対人関係のパターンが反映される現象。精神分析での重要なテーマであり、転移をいかに取り扱われるかが治療では肝要となる。
精神分析の治療的特徴

フロイト以降の精神分析
フロイトのもとでは幾人もの弟子が育ちました。その後、彼らによって精神分析は様々な理論が打ち立てられていきます。
また、そのうちの何人かはフロイトと訣別し、ユング,C.G.やアドラー,A.をはじめとした独自の学派を創設していきました。

現在も精神分析療法は心理療法オフィスや精神科など多くの現場で取り扱われています。そして、それらのルーツを語るうえで源流であるフロイトの功績は欠かせないものとなっています。