哲学と宗教の影響
人間の心は古代ギリシャ哲学の時代から追及されてきました。ソクラテスの弟子プラトンをはじめ、アリストテレスは『プシュケーについて』という著書で植物や動物の心、人間の心の性質について述べています。
一方、中世では精神病にかかった人々は“悪魔憑き”とされ、地下牢へ入れられる・・・等、酷い扱いを受ける時代も多くありました。
16世紀以降、自然科学がしだいに発展し、実験や観察などの客観的な視点が取り入れられるようになっていきます。
精神病患者の治療への大きな変化
メスメル,F.A. | 1770年代より、自然的な力を想定し、それを用いて治療にあたる動物磁気療法を行う。 |
ピネル,F. | 1794年、フランスのサルペトリエール病院に移ったのちに病院を改革し、牢屋へつながれていた精神病患者を解き放つ。 |
シャルコー,J.M. | 1860年代、サルペトリエール病院長となり、催眠を用いた治療に取り組むようになる。 |
クレペリン,E. | 実験心理学の父ヴント,W.と共に学ぶ。1890年代に入り、精神病の体系的部類を行い、精神医学の基礎を築く。 |
臨床心理学の起点と誕生
1896年、アメリカのウィトマー,L.という心理学者がヴントのもとで実験心理学を学んだのち、ペンシルベニア大学に心理クリニックを創設します。そして、1907年に「臨床心理学」という記事を発表し、その定義を説明しました。
また、精神分析を創始したフロイト,S.が講演などを含めた活動を行うなかで臨床心理学が注目され、発展していきます。
臨床心理学は簡潔にいうと、心の不調に対し、援助や予防もしくはその研究に努める学問です。日本においてその礎を築いた河合隼雄は「臨床」とは「死の床に臨む=その傍らに臨み、たましいのお世話をする」と考えていたといいます。
臨床心理学の成り立ちは哲学やそこに影響を受けた多くの先人たちにルーツがあり、特に心理療法には自分の存在を根本から見つめ直していくような側面が含まれています。