大切な対象を失った際の心理的反応である「悲哀(喪)」と「メランコリー」との比較、およびメランコリーの本質を明らかにすることを目的として著された1917年の論稿。
「悲哀」とは“愛する対象”がいないことを認識し、その結びつきからリビドーが離れる作業をじっくりと行っていく、いわゆる正常な喪失体験である。
一方、「メランコリー」とは精神症状として苦痛、外界への興味のもてなさ、行動の制止と自責などが伴う。そして、本人は誰を失ったかは認識しているが、“その人についての何を失ったかが認識できない”のだという。メランコリーの状態においては「自我喪失」により、リビドーが自我へと向けられ、対象選択からナルシシズムへの退行へと変化していく。
本論は「ナルシシズム」「同一視」との関連とともに述べてられている。また、「グリーフケア」の古典的理論として、後世へ影響を与えていった。
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