ピアジェと教育

スイスの発達心理学者ピアジェ,J.は子どもが生まれてから青年期に至るまでの知能発達を多くの観察・実験によって確かめました。20世紀の「発達心理学の父」と称されたその発達理論は世界の教育に影響を与え、基盤となっています。

生まれたときから学習が始まる
子どもの思考の発達過程を系統だてて明らかにしたピアジェは発達心理学の研究を大きく前進させました。そして、認知発達の基礎研究の進展は必然的に教育の現場へとつながっていきます。

――ピアジェ理論が現れる前までは心理学と現場の教育との考え方には大きな差がありました。当時、日本でも学習は小学校入学してから、という考え方が一般的でした。しかし、ピアジェは「生まれたときから学習は始まっている」として、新生児期からの発達に焦点を当てています。また、既存の知識を詰め込むのではなく、子どもが自ら環境へと働きかけ、得た刺激をもとに発達が促進されていくといった考え方は多くの人へ広まっていきました。

段階特徴
1感覚運動期(0〜2歳)感覚と運動が表象を介さずに直接に結びついている
記憶や思い浮かべる力がまだ未発達で見たり触ったりできるものが世界のすべての段階
2前操作期(2〜7歳)思い浮かべる力が発達し、言葉を用いたり、見立て遊びができたりする。ただし、まだ他者の視点に立って理解することができず、自己中心性の特徴をもつ
3具体的操作期(7〜12歳)具体物などを思い浮かべながら論旨的な思考ができるようになる
数や量の保存概念が成立し、可逆的な操作ができる
4形式的操作期(12歳以降)実際には存在しないような抽象的なものから仮説演繹的思考ができるようになる
認知発達の段階

ピアジェ理論とその後
1950年代の半ばまでには多くの専門家および一般の聴衆へとその理論が普及していきます。
ピアジェの理論はのちに提唱した段階よりも早期での遂行能力が指摘されたりすることはありつつも、広範囲をテーマにしたその研究は幼児教育をはじめ、現代までの発達理論の基本的枠組みになっていきます。

また、ピアジェは当時の精神分析にも関心を寄せたほか、戦後はユネスコへも関わるなど様々な学問や活動へと目を向け、広い視野で研究を続けました。

「子どもは大人とは違った考え方をする」

私生活では1923年に結婚し、3人の子どもに恵まれています。50冊以上の書籍と500本以上の論文を執筆した彼にとって、子どもたちの心身・知能の発達の観察もまた重要な研究材料だったようです。