アメリカの精神分析家であり、自己心理学の創始者コフートの主著の1つ。内容は専門家向け。
コフートは自己愛および自己愛性パーソナリティー障害の研究を先駆的に行い、従来の精神分析で扱われていた「自己愛」や「転移」に新たな視点を付け加えた。
本書のなかでも「自己対象転移」として、鏡転移・理想化転移・分身転移(双子関係)などの変化を解説している。言い換えると、融合的な関係から「鏡映」「理想」「自分に似た誰か」…といった‟自己愛を満たす対象”の移り変わりについて述べているともいえる。
精神分析学を創始したフロイト,S.は「自己愛」は「対象愛」へと成長、発達とともに移行すると考えた。一方、コフートは「自己愛」は成人してからも独自にありつづけ、安定した自信や熱中できる能力…などの成熟した形で存在しつづけると考えている。
また、自己心理学は「自己ー対象」という視点を強調するなかで「自我」を強調する自我心理学派からは批判を受けてきた経緯もある。
しかし、実際の臨床においてコフートの提起した「自己対象」からのミラーリングや、それらを通すことによって自己感を高めていくことの有用さは確かに見受けられる。
また、「共感」を大切にするコフートの姿勢は自己愛の傷つき、断片化を経験してきたクライエントへの臨床の一助となるだろう。
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