『村上春樹の「物語」』河合俊雄

『ノルウェイの森』『スプートニクの恋人』『ねじまき鳥クロニクル』『アフターダーク』『1Q84』をはじめとする村上春樹の一連の作品を心理学的に考察する。内容はやや専門的。(副題は「夢テキストとして読み解く」)

本書で繰り返し指摘されることの1つとして、10歳頃に心のなかで起きる自立への意識がある。意識を確立するプロセスにおいて、内的には超自然的なもの、「聖なるもの」とのつながりが再確認されるのだという。

現代で失われたとされるイニシエーションと、それに対しての前近代・近代・ポストモダンによる各意識の在り方を論じている。

特に『1Q84』では、孤独な登場人物たちとそれぞれの10歳頃のエピソードから、心のなかで起きている事象を考察する。

また、村上作品では珍しいロマンチックラブ的な展開について、実際の結びつきとは別にある内的な異性との結合を含む「四位一体性」といった概念から解説している。

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