カール・グスタフ・ユング(1875-1961)

分析心理学の創始者であり、20世紀を代表する思想家ともみなされています。
神話や錬金術の研究をもとにし、全人類の心のなかにある普遍的な象徴「元型」や「集合的無意識」を提唱しました。

フロイト,S.との訣別
1907年、32歳のユング,C.G.は精神分析の創始者フロイトと交流を始めます。当初は13時間かけて話し合ったり、互いを分析しあったりするなど、両者は蜜月ともいえるときを過ごしました。
しかし、しだいに考え方の違いが明確になっていったことから、2人は訣別します。
このときのユングにとってフロイトと離れることは大きな方向喪失をもたらし、一時は精神病的ともとれる状態へと陥りました。

錬金術の研究
ユングは錬金術の研究に多くの時間を費やすようになります。自分のみた幾多の夢やビジョンが象徴として、錬金術や神話のモチーフに当てはめて理解できるものであることに気づいたためです。
1944年に『心理学と錬金術』を発表。その後も1946年に『転移の心理学』、1955・1956年に『結合の神秘』の第1巻・2巻を出版します。

ユングは70歳を過ぎてからいくつもの著作を発表しており、集大成とされる上述の『結合の神秘』を書き上げました。
中年期以降の課題を重要視してもいるユングの心理学ですが、彼自身も見事なライフ曲線を描いていきました。

分析心理学の特徴
非常に夢を重視する学派です。また、それらを神話やおとぎ話といった普遍的なモチーフと重ねてとらえていくことに大きな特徴があります。

    フロイト    ユング
無意識心的エネルギーをリビドーととらえ、母との近親相姦を禁ずる父親というエディプス・コンプレックスの枠組みで理解していく。神話や錬金術をはじめとする人類に普遍的な集合的無意識を提唱。心的エネルギーも自然的なものとしてとらえる。
転移本来の感情や欲求を妨害するものとみなし、解釈を用いたり、寝椅子を使う際も治療者の影響を可能な限り取り除こうとする。転移・逆転移も治療に利用できるものとみなす。
願望充足であり、自我が検閲し、歪曲した形で意識に上ってくると考える。夢は検閲されておらず、そのありのままを一現実としてみなし、生きていくといった観点を持っている。
フロイトとユングの違い