乳幼児精神医学の第一人者スターンの著作。
乳幼児期の心の発達を4つの自己感(新生自己感・中核自己感・主観的自己感・言語的自己感)から論じている。
本書のなかで無様式知覚、情動調律をはじめとした発達早期の体験様式と心の発達、状態像を理解するための理論的枠組みが提示されている。
スターンの理論は精神分析セッションでのクライエントの語りからではなく、乳幼児観察の積み重ねから成り立ってきている。また、自我よりも自己というとらえ方に焦点を当てていることも特徴である。
そのなかで乳幼児は受動的な存在ではなく、生まれつき何らかの自己感や能動性を備えていると考察し、マーラー,M.の自他未分化な発達像を否定している。
子どもを含む発達早期のクライエントへの臨床場面だけでなく、自閉症圏、精神病圏のクライエントの心理支援へも貴重な視座を与えてくれる著書である。
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